(2005.5.2更新)
スウェーデンの福祉をのぞく(第2回)
マチュールライフ研究所
白石 陽子
スウェーデンの施設で印象的だったのは、入居者の穏やかな表情です。廊下では、ハミングしながら歩いている女性に出会いました。私を見て、ニコッと笑い、「別段なにもないのだけれど、私、いつもこうやって歌っているのよ」と言いながらお部屋に入っていかれました。
ダイニングに入ると、窓際の机で、職員がなにやら一心不乱に作業をしていました。そして、その横には車イスに座った女性が窓の外をながめてぼんやりとしています。まるで、おばあちゃんの横で孫娘が宿題でもしているような穏やかな雰囲気です。モニカさんは、「ああやって作業するときも高齢者のそばにいてあげるの。これは、なにげないことのようだけれど、高齢者にとってはすごく安心を与えるのよ。」とのこと。
レクリエーション
ダイニングルームの大きなテーブルでは、入居者の方たちが手を絵の具だらけにして、テーブル一杯に広げた紙に思い思いに絵を描いていました。あんなに手を絵の具だらけにして、まちがって口に入れたりしないのか心配しましたが、食べても害のない絵の具を使っているとのこと。手を真っ赤にそめて夢中になって手を動かしている方、わき目も振らずに絵筆を動かしている方の横で、職員はときどき声をかけながらじっと見守っています。ここでのレクリエーションは、こんな風に気が向いた人が一緒になってアクティビティをするのだそうです。
身体拘束
ふと気がつくと、絵を描いている方のそばで車椅子にすわったおばあさんが宙を見つめ、ゆっくりですが手足をばたばたしています。よく見るとおなかの辺りをベルトのようなもので固定しているために車椅子から離れられないのです。
拘束をしないように懸命に取り組んでいる日本のことを考えながら、「ここでは、拘束はOKなのですか」と聞くと、「もちろん、私たちが勝手に拘束することはありません。でも、医師が必要だと判断した場合は、ベルトもします。」とさらり。まず、ご本人の安全が大切なのだという考え方なのでしょうか。
生活の場としての施設
北米で視察したときは、いつも「人の写真は撮ってはダメ」、「入室者のプライバシーには気をつけて!」と大変慎重でした。でも、モニカさんは、近所のおばあちゃんのおうちに入っていくように、「日本からのお客さんなの。入いるわよ」といった気軽な感じで入所者の部屋に入ります。そして、彼女の後ろで入室の許可を待っている私にも「さあ、遠慮しないで、どうぞ!」と手招きするのをみると、なんだか気後れしてしまいます。
誰もいない部屋にさえも招きいれてくれましたが、どうやらさきほどホールにいた方たちに「日本から視察に来たの。お部屋をみせてちょうだいね」とお願いしてくださったようです。
部屋は、ベッドルーム、ダイニング、キッチン、シャワールームからなっています(写真左)。ほとんどがシングル用ですが、2室だけ夫婦対応になっているとのこと。ベッド以外はすべて個人の所有物というだけあって、どの部屋も個性豊かです。50数年前の結婚式の写真、子供や孫の写真を壁一面に飾ったり、机一杯に並べたり・・・。家具も個性豊かで、入所者の「生活の場」になっています。
薬の管理
施設には、コミュニティの看護師が常駐しており、入所者の薬の管理も彼女が行っています。入所者のそれぞれの部屋の入り口の脇にボックス(写真右)があり、そこに薬を保管しています。そのボックスは鍵がかけられていて看護師や職員しか開けることができません。薬は、1回分ごとに分抱されたパウチになっています。裏には「○○日、朝」と書かれているので間違うことはありません。
職員への対応
職員の質の向上について聞くと、毎年10月に親族や本人などにアンケートをとって評価してもらい、その結果について職員がみんなで話し合うそうです。彼女の「スタッフは、何よりこの仕事に誇りを持つことが大切なのよ」という一言が印象的です。
また、スタッフの健康もしっかり管理されていました。入所者のケアに必要なものはコミュニティから支払われますが、スタッフの健康のケアや仕事の効率を図るための器具などは、すべて運営している会社が負担することになっているそうです。そのため、入所者のケアをするときにも職員の負担にならないよう、移動用の器具などがあちこちに設置されていました。モニカさんの「入所者の健康をコミュニティが保障するように、職員の健康を守るのは、経営者としての義務なのよ」という力強い言葉が心強く感じられました。
[ BACK ]
All Rights Reserved
Copyright (C) 1997-2005 MATURE LIFE Inc.
ご意見、ご感想のメールはこちらまで
maturelife@cyberoz.net
|