「育児保険」の導入を考える(2003.5.19更新)
5月11日の日経新聞で山崎泰彦教授(神奈川県立保健福祉大学)が子育て支援として、「育児保険」の導入を提唱している。以下、簡単に紹介する。
少子化の背景の一因として、皆保険、皆年金、介護保険と高齢者向けの社会保障制度は非常に充実したが、子供を置き去りにしてきた。戦前の女性は、職場が閉ざされていて結婚が永久就職で、2,3人の男の子を産むことが老後の保障だった。今では高齢者の保障が充実し、雇用機会も増えて子供に頼らなくても良くなった。しかし老後の社会保障を支えるのは実は今の子供たちである。だから、育児も社会が面倒見なければいけない。社会保障が生み出したものは、社会保障のなかで解決しないといけない。子供を産み、育てるということの負担があまりにも個人に偏っていることから、育児の価値をきちっと評価して、社会全体で支援することが大事なのではないか。年金制度が次世代に依存した賦課方式の社会保障制度である以上、これからそれを負担していく子供たちを社会全体で育てるのは当然である。たとえ他人の子育てであっても支援する制度が必要である。
欧州では、能力主義の賃金制度だから家族への配慮がなく、子供を多く持つと生活難を招きやすい。貧困の解消は社会保障の目的だから、児童手当を年金、医療と並んで充実させてきた。日本にはその発想がなく、児童手当は就学前の子供に限定し、その額も少ない。
税ではなく、保険にこだわるのは普遍化したいからである。所得の多寡に関係なくすべての子供を社会全体で支えるには、日本では保険がいい。
その基本的な構造は、介護保険と同じ構造で、違うのは現金給付と併用すべきである。就学前までは」、サービスか現金かを選択する。小中学生になると児童手当に相当する現金にする。給付の上限は要介護度と同じような要保育度を決める。保育コストに応じて、年齢を別にし、ゼロ歳児が最も高額になる。幼稚園も利用できるように保育園と同じ仕組みにする。保険料はすべての現役の人が、基礎年金の保険料負担に上積みする形で払うと言うものである。
家族犠牲の上に成り立っていた介護問題が「介護の社会化」ということで介護保険が創設されたのなら、同じように「育児・子育ての社会化」として、育児保険も面白い視点である。スウェーデンでは、2002年から子供一人あたりの育児休業期間が480日に延長された。親保険制度による休業補償期間は父母それぞれに240日ずつ与えられている。このうち180日分は相手に譲れるが、60日分は本人が育児休暇を取らないと補償されない。
また、親が職業を持つ、持たない、にかかわらず、安い費用でプレスクール(就学前保育)を最低1日3時間、週15時間以上提供することが自治体に義務付けられている。スウェーデンでは、少子化対策でなく家族政策。児童を持つ家庭のための支援政策である。国民が望むことを支援し、その結果として出生率が回復したわけである。
高福祉、高負担の国民的合意が困難な日本では、このような育児休暇や休業補償は望んでも不可能に近い。「育児の社会化」として、少子高齢化の社会保障のありかたとして育児保険を真剣に検討し、国民的な関心を喚起してもよい時期に来ているのではないだろうか。
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