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ボタン「広域連合と介護保険−奈井江町のヒアリングを基にして」ボタン

 地方財政審議会委員 木村陽子


1.はじめに
 介護問題への対応は、高齢社会において回避できない基礎的自治体の行政課題である。財政面から言えば、介護サービスの供給を目的とした全国的な財政調整制度である介護保険がスタートしてはや1年がすぎた。介護保険が始まることによって、自治体の介護問題対応への意欲や能力、財政力が高まり、短期あるいは中長期に次のことが起こりうると私達は期待した。つまり、介護保険の展開は住民参加や自治体間の広域的連携などさまざまな面で行政の質を変え、自治体の合併を考える契機になり、また医療面では社会的入院を減少させると期待した。おりしも、都道府県は2001年度末までに合併要綱をまとめ、自治体合併推進の理由と合併案を住民に示し、各地域ではさまざまな説明会や討論会がもたれている。はたして、介護保険を通じての広域的連携はどのような実をもたらしているのだろうか。

 本稿では、北海道空知中部広域連合に着目してこの問題を考えてみたい。広域連合は1997年に誕生した従来の事務組合よりも自治能力を高めた広域的連携の仕組みである。介護保険広域連合は2000年4月1日現在ですでに58存在した。本稿の基礎になったのは、財務省財政制度等審議会財政制度分科会財政構造改革部会が2,001年3月24日に実施したヒアリングであるが、文責は木村個人にある。当広域連合をヒアリング先に選んだのは次の理由からである。第1に、北海道は医療費が高く、とくに1日あたりの単価は全国平均だが、入院日数が長いこと、つまり冬期の高齢者の入院が医療費をおしあげている。はたして、介護保険のスタートは社会的入院を減少させたのか、ということを、介護基盤の整備に熱心な当広域連合において見てみたいという気持ちがあったからである。

 第2に、広域的連携は介護保険を契機として広がっている。しかし、それらは、主に、要介護度の認定など介護保険を実施するための一部の業務にとどまっている所が圧倒的である。空知中部広域連合は、介護保険サービスの提供にかんする事業はもちろんのこと事務まですべてを行っている。1997年に制度として創設された広域連合は、意思決定に時間がかかるなど迅速な対応が要請されるこれからのマッチせず、すでに旧自治省時代から国は広域連合よりも自治体の合併のほうに政策推進の方向転換をしている。当広域連合がうまく機能する理由はなぜか、また、広域連合のメリットは何かを知りたいと思ったからである。はたして、質を維持しながらコストを削減する効果があったのだろうか。

 第3に、当広域連合は、国民健康保険事業を介護保険と同じく実施している。スウーデンの1993年度のエーデル改革にみられるように介護と医療の連携のメリットがあるのだろうか。次節以降では、これらについて考えよう。

2.空知中部広域連合
 ここで簡単に、1998年4月に設立された空知中部広域連合について説明しよう。昔の産炭地である中空知地方の1市5町が介護広域連合の構成メンバーであり、高齢化率の高い、人口の少ない過疎地が広域連合を組んだ形である。当広域連合の契機は、1,996年に奈井江町と浦臼町でモデル介護保険認定審査会の設置など介護保険モデル事業実施本部が設置されたことであった。
 平成12年度の広域連合内の人口総数は33266人、高齢者人口は9267人、平均高齢化率は27.9%である。要介護者数は1221人、要介護率は13.2%である。介護保険料は月3100円である。居宅サービス平均基盤整備率の広域連合内での平均値は20.3%である。 
広域連合組織は、連合長、副広域連合長5人、助役及び収入役各1人である。奈井江町には町立の国保病院は病診連携開放型共同利用病院(「オープン病院」)がある。開業医にも入院施設や高度医療機器の利用ができる。町立では全国1ヶ所であり、指定されたのは平成6年である。

3.介護保険がはじまってどうであったか

(1) 社会的入院は減少していない。
 介護保険が始まっても社会的入院は減少していない。その理由として共働きが多く、在宅介護では負担が大きいこと、施設入所にたいする心理的抵抗が大きいこと、があげられた。通常、社会的入院をしている者は家族の介護力も小さく、介護の必要な程度も大きい。在宅にシフトするためには、先進地域ですでに見られているように、医療・介護・福祉の連携、福祉人材の増加が必要である。

(2) 広域連合のメリットはどこにあるか
 広域連合のメリットは、次の点に求められる。第1に、より少ないコストでサービスを供給できることである。介護保険の広域実施では職員は9人であるのにたいし、単独実施では16人である。広域実施によって、職員給与費はおよそ3800万円削減されたことになる。また、国保・老健広域化については、広域実施では職員は5人であるのにたいし、単独実施では12.3人である。広域実施によって、職員給与費はおよそ5,700万円削減されたことになる(いずれも空知中部広域連合の試算による)。
 第2に、介護、国保、老人保健の3事業にそれぞれの分野で実施されてきた健康増進事業、介護予防,保健指導の重複を避け実施することができる。第3に、オープン病院システムにより、多受診、重複検査が減少した。病院の共同使用によって、コストが削減され、患者にとっても負担が少なくなる。

(3)広域連合がうまく機能する理由は何か
 当広域連合がうまく機能する理由は、介護保険がスタートするまでに広島県調江町などに視察を重ね、自らに似合う制度を用意周到に模索したこと、奈井江町長によるリーダーシップと協力体制があること、また介護保険という事業実施のための連合であることがあげられる。  

(4)国民健康保険との共同実施
 国民健康保険には、国民健康保険税は地方税法上、広域連合では賦課徴収ができないという問題がある。一方で、職員には医療と福祉の連携について問題意識が深まったということであった。将来的には、介護保険と医療保険の統合、保険者の合併が必要となろう。

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