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うわさのケアマネさん(14) -前編-

NPO法人 あいむ
 理事長 浅野壽一さん


−NPO法人で事業を始められた動機は何ですか。
 介護保険が始まって半年後にNPO法人を立ち上げ、地域密着型で居宅介護と訪問介護を始めました。
 それまでは、特別養護老人ホームで在宅部門の責任者として地域のケース会議などに関わっていましたが、もともとソーシャルワーカーとして、エンパワメントという考え方をベースにやっていきたいと思っていました。ですから、地域や自分の思いを実現できる場として、地域の中で介護や福祉を見直し、「福祉のまちづくり」でなく、地域の問題について自分たちで考えていく、「福祉でまちづくり」を進めるためにNPO法人という形にしました。
 今、目標としているのは、「介護のコンビニ」です。介護保険制度や支援費制度などの制度だけでは、生活は支えることができないため、制度外のサービスや制度の対象から外れる人へのサービスも一緒に考えていく。ここにNPOでやっていく意味があります。

−コンビニエンス化のイメージについてお聞かせ下さい。
  いわゆる、「24時間、いつでもどこでもあなたのおそばに」です。といっても、いつも事務所が開いているという意味ではなく、いつでも連絡が とれるということです。地域のワンストップサービスとして、困ったことがあったら連絡したり、来てもらったりする場所が必要で、そこが問題を解決しなくても、「相談できる場」があれば安心できるのです。
 地域で生活する場合は、安心感が大切なのに、それがないから特養などの施設に入るわけです。私たちは、完璧な安心を与えることはできなくても、きっちりしたところへつなぐまでの「代わりになるもの」は提供できます。例えば、「コンビニに行けば、いつも自分が使ってお醤油ではないけれど、お醤油はある」という感じです。一人で何もかもやらなくても、電話したら相談にのってくれる、救急車を呼んでくれる・・・そういう安心感が大切なのです。

−活動は地域に限定した地域密着型ということですが。
  原則的に、地域(小学校区)外には行きません。介護は、インターパーソンでの仕事です。人と人が向き合わなくてはならない仕事においては、歩いていける距離がベストだと思います。私たちは、NPOですから、市場の拡大ではなく、「良い介護とは何か」を考えていきたいと思っています。もちろん、何件かは遠いところもありますし、支援費制度対象のサービスについては、遠くまで行きます。でも、基本は「小学校区ぐらいの広さで歩いていける距離」です。
 事業者として運営を考えると、市場は広い方がよいでしょう。でも、介護の質を考えたら、(赤字になると問題ですが)活動範囲を限定することで利用者や地域がみえてきます。それを大切にしたいと思っています。

−医療行為については、どのように対応されていますか。
 基本的に医療行為はしません。ヘルパーには、必ずドクターの指示を仰いでくださいと言っています。ドクターが「いいよ、そのくらいならやってあげて」というのであれば、やってもいいと思います。
 基本的には、「皮一枚」を判断基準にしています。例えば、利用者の方が転倒して怪我をした時は、緊急性の問題でもありますから対応していますが、褥そうなどの処置はやりません。また、爪についても、ちょっと伸びていて生活しにくいときは切ってあげてもいいのかもしれませんが、巻き爪は、処置しないように言います。判断に迷ったときは、かならず医師に相談するように言っています。

−ヘルパーの質の向上に関して心がけていることは。
 ヘルパーには、「生活全体を見てください」と言っています。単に介護だけをみても生活を支えることはできません。その方の生活をみたとき、「これは介護保険だからやる」、「これは介護保険外だからやらない」というのではなく、利用者にとって何が大事かを常に考え、そのなかから出てくるものに対して、制度の対象となる部分とならない部分があれば、分けて考えたらいいじゃないかと思うのです。
 ですから、私たちは、介護保険のサービスの契約と、介護保険サービス外の生活支援の部分の契約書と二本立てでやっています。

−今度の介護保険の大改正に関して、訪問介護の点からご意見をお聞かせ下さい。
  まず、医療行為について明確にして欲しいです。認めるなら認めて、研修システムをしっかり実施する。例えば、痰の吸引が必要になった時、専門職であるヘルパーは何もできず、家族にお願いしなくてはならないのはおかしいと思うのです。現在の研修プログラムのままではムリでしょう。でも、プロとして介護をしているのですから、一定の枠を設定してでも認めるということを考えてはどうでしょう。施策が在宅にシフトし、箱ものは作らない方向のなかで、現実に即した中でどこが何を担うのかをもう一度考えないと、家族の介護負担は軽減していかないでしょう。
 それと、もう一つ。私は、現在のヘルパーの介護報酬や世間一般の待遇はまだまだ低いと思います。卵が先か、鶏が先か、という話になりますが、現在は、待遇が低いためにヘルパー業務の専門性が低く見られていることはないでしょうか。ですから、ヘルパーには、地域でのトップクラスの賃金を払いたいと思っていて、それが、NPOでやっている一つの意味だと思うのです。待遇を高くすることでヘルパーの質は、上がっていくと思います。 

◆浅野 壽一(あさの としかず)◆(敬称略)  

社会福祉士、NPO法人あいむ 理事長
在宅介護ステーション にこにこ 介護支援専門員

 身体障害者通所授産施設「乙訓の里」施設長の後、米国I.P.X(International Professor Exchange)プログラム参加(国際社会福祉協議会推薦)。
さらに、フィラデルフィアにてエンパワメントリビングプログラムの研修終了後、帰国し、在宅サービス供給ステーションディレクター、ケアハウス次長などを経て、平成12年9月より「特定非営利活動法人あいむ」理事長。また、平成16年4月より(社福)大阪府総合福祉協会非常勤職員。
主な著書:WellーBeing支えるということ 
連載「婦長主任事情」 産労総合研究所

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