97/10/28 晴れ

午前7時。眠い目をこすりながらさっきまでつめていた荷物と
胸いっぱいの希望を持って家を出る。

16:00 ヒースローに到着。

機内のスピーカーから原田知世の"シンシア"が流れてきた。
すごくナイスな選曲と思いながらターミナルへ。そこにはツアー
の人が出向いてくれており、ホテルまでバスで送ってもらう。
僕の泊まるホテルはウェストブロンプトンから近いパラゴンホテ
ル。チェックインを済ませ部屋に入ると、機内でさっぱり眠れな
かった為か、急に疲れがおしよせてきた。しかし今は17:30。
これで寝ちゃうとお年寄りと同じ起床時間になると予測したので
近所を散歩し、夕食のバーガーショップに入る。「さあ、明日か
らフルにロンドンを楽しむゾ!!」希望でいっぱいの僕にとって一人
で食べたチキンサンドでも充分おいしかった。


97/10/29 晴れ

「さあ、とにかく街に出よう!」とホテルを出る。
ウェストブロンプトンだと乗り換えがめんどうなのでアールズコ
ートの駅まで歩く。1週間のトラベルカードを購入し、トテナム
コートロードへ。オックスフォードストリートを歩き、まずは
Virgin、HMVをチェック。イギリスのポピュラーダンス物のレコ
ードが£2〜£3と安く買えた。洋服屋もその後見たけど僕の目に
留まる洋服ってアメ物ばかりで買う気がしない。最後にTRAXへ。
小さな店内におすすめのレコードが£5〜£8でラックに掛けてあ
る。「適当に聞きたいのですが」と言うと20枚ほど試聴盤を渡さ
れ、その中から欲しいレコードを差し出すとその路線でほかのレ
コードをたくさん出してきた。よろこんでそのレコードを聞いて
いるうちにトイレに行きたくなったので、店員に「トイレを貸し
て」と言うと「ここにはない」と言われ、しょうがなくがまんし
ながらレコードを聞いた。お会計を済ませた僕は店を出て猛ダッ
シュ、Virginにかけこんだ。しかしVirginでも「お客様用のトイ
レはない」と言われ、さっき利用したHMVに走った。「バージン
エアラインなんかに乗るんじゃなかった」なんて思いながら…。

ロンドン最初のクラビングはヘブンの"FRUIT MACHINE"。
DJはRICH B、MARTIN CONFUSION。ドキドキしながらチャリン
グクロスからヘブンまで歩く。15分ほど並んで入りフライヤーを
出し£4払う。クロークで荷物を預けていざフロアーへ行くとたく
さんの人達がいた。「なんかエイジアに少し似ているなぁ」なん
て思いながら見ていると、"ギュッ!"いきなり足を踏まれた。やた
ら1人でスペースをとるダンサー踊りの外人がいっぱいいる。イヤ
な気分になりお立台の近くに行くと、ぜんぜんカッコよくない外
人が大きな態度でお立台を陣取っていた。音は基本的にチャライ
んだけど、「何故この曲の次にこれなの?」といった選曲が連
発。逃げるように2階のフロアーに行くと、マドンナの"ホリデー"
やドナサマーの"イナフイズイナフ"など往年のヒットメドレーを
みんな手拍子、大合唱しており、"老人のつどい"の様だった。上と
下で3時間位居たが、もうGive up。タクシーでホテルに帰る。


97/10/30 晴れ

今日も雲1つない晴天。
遅く起きた僕はリージェントストリートに行く為、ピカデリーサ
ーカスに。そこはイギリスの誇る高級品店、デパートが並ぶ通り
である。地上に出るとタワーレコードがあり、道を見渡すとやは
りやはり高級感漂う感じのお店がズラリと並んでいる。さまざま
なファッション、雑貨からディズニーストアまで見ているだけで
も楽しい。ロンズデールの店があったのでスポーツタオルを購
入。バーバリーの本店にも入ったが値段を見ているだけでおなか
がいっぱいになり、何も買わなかった。

本日のクラビングはトテナムコートロードにあるアストリアシア
ターで、月、木、土と開催されている"G・A・Y"へ。20分位並ん
で入り、フライヤーを出すとなんと£1で入れる。ダンスフロアー
へ行くと、昔のディスコを円型状に大きくした作りで大勢の人達
で盛りあがっていた。かかっている曲はチャライ音が多く、客は
子供からお年寄りまでといった感じ。アーティスティックな感じ
は全くないが客もDJもエナジーがあり、お祭りみたいで楽しかっ
た。2階にあがると下のフロアーが全て見え、見下ろしている人や
社交している人達がいっぱいいた。4時間位いて疲れたのでホテル
に帰る。


97/10/31 晴れ

昨日寝る前に行くと決めたキングスロードへ。キングスロードと
言えばパンク発祥の地ということで行く前から名前は知っていた
し、一番行きたかったストリートなので胸をはずませスローンス
クエアで降りる。パンクの人や奇抜な人がいる訳でもなく、ほか
のストリートに比べ人が少ない。いろんなブティック、パブ、雑
貨屋がほのぼのと並んでいてすごくおちつく感じ。ゆっくり歩き
ながらウィンドゥショッピングを楽しみ、キングスロードの末端
にさしかかると大きな時計のディスプレイが印象的なお店、ワー
ルズエンドに着く。その近くにスケーター御用達系のお店があっ
たので入り、GOOD ENOUGH UKのTシャツをGet。スローンスク
エアに戻る途中、夕食のサンドウィッチ、バナナ、ミルクを買い
ホテルに戻る。

今日はヘブンの"GARAGE"。僕の大好きなMRS WOODが聞ける日
である。情報誌で時間を確認してDJメニューを見ると……なんと
そこにはおばさんの名前がない!! 書いてある名前はRACHEL
AUBURN!!! よーく調べるとMRS WOODはREACTのツアーでいない
とのこと。お目当てのDJがいなく、しかもRACHEL。実は東京で1
度RACHELのプレイを聞いたのだが、あまり好きではなかった(作
る物は好きなんだけどネ)。あわてて「じゃあ金曜日はターンミ
ルズでTALL PAULの"GALLERY"があるはず!!」と思い見ると
CHRIS&JAMESになっている。なんてついてないんだろう。
今日はハロウィン、なんか1人ぼっちのクリスマスをこの状況とオ
ーバーラップしてしまった僕。途方にくれたがよーく考えた。
「まてよ、RACHELだって人の子、あの時はあの時、もしかしたら
今日はいいプレイが聞けるかも」と思った僕はGARAGEに行くこ
とにした。

ヘブンに着くとちょうどオープンの時間で、僕で3番目位だった。
待つこと30分、どんどん人が並び最後尾が見えなくなった位で入
場し始める。入るとNYっぽい感じのハードハウスが流れており、
わりといい感じ。誰もいないフロアーで踊っていたが2時間ほどた
つと、もうフロアーもバーも人・人・人。フルーツマシーンみた
いなうっとうしい客もいたが、音的に好みだったので踊っている
となんか音が変わってきた。「アレ?」と思い恐る恐るDJブース
を見ると、白いビスチェを着た金パツの女が髪を振り乱しながら
DJをしている。
RACHELだった。
怖い子。
1時間位フロアーに居たのだがおもしろくなかったので、2階のフ
ロアーへ。しかし2階もままならなくヘブンを出ることに。クロー
クで荷物をとり、出口に進む途中アジア系の男女3人がじっとこち
らを見ている。クラブで初めて見るアジアの人。なんだか話しか
けたそうな感じだった。1人でずっと行動していた僕も話したかっ
たんだけど、"チャイニーズの人かもしれない"というのと極度の疲
れの為、結局帰ることに。ヘブンを出ると、タクシー待ちの人達
でいっぱいだった。外は寒く、精神的にも肉体的にも疲れきった
僕はゆっくり歩く。何駅位歩いただろう。ランプの点いたタクシ
ー発見、無事ホテルまで。
僕は何の為にロンドンに来たんだろう……。


97/11/1 曇り

僕の心を映すかの様にドンヨリ曇った空。
トラファルガースクエアに行き、観光客とハトの大群を見てテム
ズ河沿いを歩く。それからコペントガーデンへ。紅茶屋があった
のでミックスフルーツの紅茶を買い、そのままオールドコンプト
ンストリートまで歩く。もう薄暗い中、その通りに入ると窓から
おねーちゃんがこっちにウィンクをしてきた。何やら怪しげな感
じ。その手のお店が並んでいる中、アメリカンレトロ発見。かわ
いい洋服や雑貨がいっぱいあり、店内がきれいでディスプレイも
かわいい。手帳を購入しレスタースクエアまで歩く。そこから地
下鉄でナイツブリッジまで行き、ロンドンの老舗デパート"ハロッ
ズ"へ行くが人の嵐でパンとジェリービーンズを買いすぐにホテル
に戻った。

早朝3:30。
目覚ましが鳴ったと同時に起きた僕は、すぐに着がえ、ホテルを
出る。外はまだ暗く、凍りつく寒さで霧がかかった感じである。
タクシーに乗って20分、「だいじょうぶかナァ?」と思っている
と長い列が見えてきた。「あれは!!」と思った時、タクシーが止ま
った。タクシーを降り、すぐに列に並ぶと低音の響いたゆっくり
めのハードハウスが聞こえてくる。並んでいる人達を見る限りで
はオッペケペーの人がいなく大人ばかり。緊張しながら待つこと
30分。入り口を入ると例のクスリのカプセルに"Trade"と書いた
ディスプレイが、ブラックライトで煌煌と光っていた。「カッコ
イイ!!」と思いながらキャッシャーに£12渡し階段を下り、クロー
クに荷物を預ける。ダンスフロアーには壁に大きな絵が何枚か飾
ってあり、ディスプレイといったらこの程度だがシンプルでカッ
コ良くそのフロアーにもマッチしていた。1人でやたらスペースを
とる人もいない中、定位置を決めた僕は踊りだした。多分マルコ
ムダフィーだと思われる渋めのハードハウスで、「今から何かが
始まる」といった感じ。2時間位過ったころにはほとんどの客が
上半身ハダカになりライティングが変わり始めた時、淡々と続い
ていたハードトラックにいきなりブレイクが入った。クラウド達
は歓声をあげた。
「なんだろう、この高揚感」
僕は鳥肌が立った。
光のシャワーと音の洪水の中、強いエナジーを放つクラウド達。
完全に僕はこのフンイキにヤラれた。
踊っているうちに曲が自然に、そして少しずつ早くハードになっ
てきた。一息入れようと2階に上がるとそこはゆっくりめのディス
コっぽいトラック物が流れており、社交しながら踊る人達でにぎ
わっていた。「DJは誰だろう?」とDJブースに近づくと、見たこ
とのあるDJが2人交代でDJをしている。
「SHARP BOYSだ!!」
「しかもこんな間近に!!!」
アイドルを見ているような気分の僕にとってもはや彼らの選曲は
どうでもよかった。しばらくすると彼らは自分たちのスリップマ
ット(例のロゴの)を片付け、次のDJにバトンタッチのキスをす
る。又ハードな音が欲しくなった僕は下に降り、フロアーに進む
と、さっきよりもハードでアップテンポな音になっていた。
「なんか聞いたことのある様な感じだナァ」と思いDJブースを見
るとTONY DE VITがスピンしていた。彼のプレイでしばらく踊
り、裸のマッチョ軍団が縄張りのように社交しているドリンクバ
ーに行く。ドリンクをもらい、フロアーに向かいながら「そろそ
ろパーティーも終わりだ」なんて思った時、"ポン"と肩をたたかれ
た。後ろを向くとなんとそこにはMASAAKIが居た……。
MASAAKIはお互いに原宿で働いていたころからの知り合いで、ロ
ンドンに住んでいることは知っていたがまさかこんなところで会
えるとは思ってもみなかった。TONY DE VITの音に反し、僕の頭
の中で"シンシア"が流れてきた……。

トレードが終わり僕と彼は"Sherbet"へ。
このイベントはチャリングクロスにある、サウンドシャフトで昼
の1時〜夜の10時までやっている地元の人に言わせれば物好きし
か行かないパーティー。DJはPETE WARDMAN、DAVE
RANDALLなど。フライヤーを渡して(Tradeの帰りに配布された)
£5払い入る。倉庫みたいなところを改造した感じのこの箱、ダン
スフロアーは小さめなんだけど逃げ場が広く、Tradeの後に行くに
はピッタリの場所だと思った。音はSHARPやTRIPOLI TRAXなど
馴染みのあるトラック物がガンガンかかっており気軽に踊れる感
じ。人も夕方になるにつれ増えてくる。そうこうしているうちに
フッと時計を見ると5時!!今日の夜のこともあるので一旦MASAAKI
の家で仮眠をすることに決めた。


97/11/2 多分曇り

3時間位仮眠をとり、僕たちはターンミルズで行われている
"MELT"に行く為ファリンドンへ。実はDTPMにも行きたいと言っ
たのだが、「今のDTPMはお金を払うのがもったいないイベントに
なっちゃったんだよね。それよりもMELTですごくいいDJがいるか
ら」と言われ「BLU PETER?」と聞くと違う名前が返ってきた。
「E. J. DOUBELL」
僕の知識にはない名前である。
フライヤーを渡し£8払って地下に行くと、昨日よりも男っぽいア
ッパーなテクノが流れていた。日曜日だっていうのにTradeに引け
をとらない客入り。しばらく音を聞いているうちに自然に体が動
いてしまう状態になったときMASAAKIが「このDJいいでしょ」
と言ってきた。「誰これ?」と聞き返すとそのままDJブースの方
に連れていかれ、見てみるとショートカットの女の子がDJをして
いる。「E. J. DOUBELL」である。疾走感あふれるアッパーなトラ
ックをかける彼女のプレイは、強烈にカッコよくましてや女とは
思えないほど。次に本日のゲスト"TASHA KILLER PUSSIES"。こ
の人も知らなかったのだが、ハードでトランシーな選曲をする人
だった。そしてラストのBLU PETERへ。僕にとってE. J.
DOUBELLの印象が強すぎた為、この日のBLU PETERのプレイは少
し物足りなかった。朝の6時頃、一旦音が止まり彼がアンコール2
曲をかけてパーティーが終了した。


MELTはGARAGEをやめて以来(SHARP BOYSがクビにしたという話)ゲイナイトでのレジデンシーを持たず、「今のゲイクラブシーンには音楽的に新しいものが感じられないので興味がない。むしろ自分でパーティーを始めたい」と語っていたBLU PETERが始めたパーティーで、PETERのほかにJON THE DENTISTとE J DOUBELLが週替わりでレジデントを務めている模様。ゲストにはCHRIS LIBERATORやDAZ SAUNDなんかが参加しているようで、確かにゲイナイトにしては(音的に)結構ハードかも。ちなみにE J DOUBELLのリリースしている作品はどれもすごくカッコイイです。DJを聴いてみたい。(SAWA)

97/11/3 曇り

モーニングコールのベルが鳴り、脳だけがその音を掴まえたが手
が出ない……。当初の昼の予定は大英博物館やナショナルギャラ
リーなど芸術や美術作品を見るハズだったのに。今から出ても着
いたらちょうど終わる時間帯。しょうがなくトテナムコートロー
ドへ行きTRAXレコードへ。そしてレコードをチェックし、近くの
レストランで夕食をすませホテルに戻った。しばらくすると
MASAAKIがホテルに来てくれた。今日は夜のパブを体験するハズ
だったのだが、ターンミルズで新しいパーティー"WELL"があると
のこと。「せっかくロンドンに来たんだから好きな様に選んで、
くいの残らないように」と言われ悩んだ。

結局2人はファリンドンに向かう。
さすが月曜日、人はそんなに多くはないが、来てる客層は
"WARRIORS"(これもパーティーの名前)系の人が多いらしく、レ
ザーやニューロマンティック(古い?)ファッションを身にまとった
人達で見た目に華やかさを与えてくれた。音はニューエナジー系
で、まあまあ良かった。3時を過ぎると人も少なくなり「お茶して
帰ろう」とMASAAKIに告げオールドコンプトンストリートでお茶
をした。「この3日間本当にありがとう。君のおかげでロンドンを
2倍も3倍も楽しめたよ」と言うと、彼は「良かった。僕も楽しか
った」とニコニコ笑った。タクシーを拾い僕は「手紙を書くネ」
と言いながらお礼の花束を渡して彼と別れた。


97/11/4 晴れ

最後の力をふりしぼる様にヒースローへ。
何だか「アッ」と言う間の夢の様な1週間。飛行機のシートにすわ
ると1週間のことが走馬灯の様に、頭の中をグルグルと駆け巡っ
た。飛行機が走り出し、機内のスピーカーからPET SHOP BOYSが
流れてきた。

トイレが不便で
食べ物がまずく
空気が乾燥して
とてつもなく寒い
不健康な街 ロンドン

しかし、なぜか切ない気持がこみあげてきた僕は、 正面を向けないままずっと窓を見ていた。
「いつか又、きっと……」
強く何度もそう思いながら。

END



 感想のコーナーby SAWA

 いやー、単なるクラブレポートだと思って読んでたら、結構泣かせる日記でしたね。特に「シンシア」が流れるところとか、花束渡すところとか。ういちゃんの性格の良さがにじみ出てます。あとチャイニーズかもしれないと思って話しかけられなかったところも泣かせる。英語でアーユージャパニーズ?とか聞きゃーいいじゃんとか思ったのだが、ういちゃんは初めての海外旅行で、英語も話せなかったらしい。ちなみにDJ UIROHは97年11月からラブリー3人目のレジデントDJとして活躍中です。

右のはGARAGEのフライヤーの表です。小さくするにはもったいないので大きく載せてみました。この子カワイー。なおこのページの画像は全てUIROHくんがロンドンで集めて来てくれたフライヤーです。

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